こんにちは、自称スマブラDX元世界王者のCaptainJack(@CaptainJacksan)です。詳細プロフィールはこちらから。
以前僕がお世話になっていた弁護士(以下CJ弁護士と呼称)に大会で賞金を出すことについての法的見解を聞いたところ、大変興味深いやり取りになりましたのでシェアします。
結論から言うと、
スマブラのアイテムなしガチタイマン大会は賭博には当たりません。
その心とは?解説していきます。
目次
争点は「偶然性」と「賞金の出どころ」である
恵比寿南法律事務所の服部匡史弁護士が執筆された記事によると、まず賭博罪に当たるか否かの争点は、「偶然性」と「賞金の出どころ」に左右されます。
刑法185条では「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する」と定められています。ここでいうところの「賭博」とは、偶然の勝敗に関して財物を賭けてその得喪を争うことをいいます。
「偶然の勝敗」とはそのままの意味で、勝敗に少しでも運が絡んでくる余地があれば、これにあたると思っていただいて構いません。ゲーム大会は、プレイヤーの技量だけでなく、運によって勝敗が左右されますから、「偶然の勝敗」に関するものということになります。
「財物…の得喪を争う」とは、勝者が財産を得る反面、敗者が財産を失う関係にあることをいいます。この関係をもう少し分かりやすくいえば、勝者の獲得する賞金が、敗者の財布から出ているというイメージです。したがって、勝者に賞金が与えられる勝負であっても、敗者に何ら財産を失うリスクがない場合には、「財物…の得喪を争う」ことにはなりません。
簡単にまとめると、勝負に偶然の要素がなく勝者への賞金が敗者の財布から出なければOK。ではスマブラの場合はどうでしょう?
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「賞金の出どころ」は一切問題なし
大会では運営費及び会場費として参加費が徴収されることがほとんどですが、徴収した参加費がそのまま賞金の財源になるのはアウトです。
これはおそらく大まかに言って日米欧豪の中では日本のみの法律で、海外の大会では参加費を原資に賞金が分配されることがほとんどです。
しかし日本の法律がそうなっている以上仕方ありませんので、参加費以外の方法で賞金の原資を確保する必要があります。
となれば賞金を出す第三者のスポンサーがいれば良く、実際にスポンサーが見つかるかどうかは別として、理論的には至極簡単な話になります。
スマブラのガチタイマンに「偶然の要素」はあるのか?
となれば、争点はまさに「偶然の要素」の箇所となります。CJ弁護士が注目したのもまさにそこで、スマブラの偶然の要素についてたくさん質問されました。
そこで聞かれて思ったのは、大会で採用されるガチのタイマンルールにはほぼ運の要素が絡まないということ。
「1vs1」
「アイテムなし」
「変なステージなし」
このルールにおいて、偶然が絡むことはほぼありません。
スマブラWii Uの例で説明しますと、ただ一つだけあるとすれば、ステージ『すま村』の移動式床。
これが画面外に移動することがあるため、たまたま床上でダウンした時立ち上がる前に
画面外に移動してしまったら、蓄積%に限らずミスになってしまいます。
この些細な要素により「運が絡むゲーム」と判断されるか否か。そこが争点になりますが、現実的には無視できる範囲でしょう。
とすれば、スマブラのガチタイマンは運が絡まず、そもそも賭博の対象に当たらないと判断することができます。
すま村 – 大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U まとめWIKI
風営法と景品表示法
スマブラの大会にはあまり関係ありませんが、風営法と景品表示法にも触れておきます。
風営法は、風俗営業を営む者に対して一定の行為を禁止しており、23条2項では「第二条一項…八号の営業を営む者は、…遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」と定められています。2条1項8号は実際に読んでみると分かりづらいかもしれませんが、ゲームセンターがその典型例です。
風営法により、ゲームセンターの経営者は賞金(賞品)付きの大会を開催してはならないとされているようです。
ケース4「ゲーム制作会社Dは、参加資格をD社制作のゲーム購入者に限定した賞金付きゲーム大会を開催することにし、賞金はスポンサー会社から全額提供してもらうことにした。」
ケース4では、賭博罪と風営法はクリアしているので、賞金付き大会を開催すること自体に問題はありません。ただし、参加資格を商品購入者に限定しているため、参加資格目当ての購入を誘引することにつながるもので、取引に付随して経済上の利益を提供しているということになります。したがって、この場合は、景品表示法によって提供できる最高額等が制限されることになります。
参加資格を商品購入者に限定している場合、景品表示法により提供できる最高額等が制限されるようです。
これらは賭博罪に相当するか否かの基準にはなるものの、スマブラの大会においてはほとんど関係がなく、あまり気にしなくても大丈夫です。
消費者庁の言う「賞金上限10万円ルール」とは
一応10万円ルールについても触れておきます。
トップ画像にもある通り、消費者庁は「ゲーム大会の賞金の上限を10万円に定める」と発表しました。
これは真実ですが、それは賞金の出どころがその大会でプレイされているゲームのメーカーだった時の話。第三者であるスポンサーが賞金を出す場合には、何の問題もありません。そう、何の問題もないんです。
ではなぜ日本では巨額の賞金付き大会が開催されてこなかったのか?
その答えは、ひとえに「巨額の賞金を出すスポンサーがいなかった」という一点にあります。
先日、世界最大の格闘ゲームの祭典EVOが2018年1月に東京で「EVO JAPAN」の開催を発表し話題を呼んでいますが、
同時に「ゲームメーカーが大会に賞金を出す場合は10万円を限度とする」と消費者庁が発表するなど、新しい産業であるがゆえの問題は尽きません。
近い将来巨額賞金付きの大会が開催される可能性も
2018年1月に東京での開催が予定されている格闘ゲームの祭典EVO JAPANですが、毎年7月に行なわれているラスベガスでの本大会と同じクォリティで開催すると発表されています。
まずは本場ラスベガスと同等のものを作り上げると宣言された、
格闘ゲームの世界的祭典、EVO JAPAN(2018年1月)を楽しみに。
とすれば、賞金額も例年のEVOのそれを上回ることも不可能ではないはず。ちなみにEVO2016のスマブラDXとWii Uの優勝者が獲得した賞金は、それぞれ約140万円、160万円でした。
タイマン大会は賭博に当たらないと判断されている以上、第三者のスポンサーが存在する限り、日本開催のEVO JAPANでも同等の賞金を設定することは可能なはず。皆が度肝抜かれる盛大な賞金付き大会を期待したいところです。