こんにちは、妻の母国フィンランドでプロブロガー&プロゲーマーを目指すCaptainJack(@CaptainJacksan)です。
前回のフィンランド爆上げ記事では、11項目に及びフィンランドの良さを説明し、移住した場合いかにメリットがあるかを語りました。(北欧・フィンランドに移住するメリットとデメリットまとめ。メリット編【保存版】)
物事には表があれば裏があるように、もちろんフィンランドにも良いところと悪いところがあります。中でも、求職・仕事事情はほとんどの人が知らないフィンランドの負の側面。フィンランドで仕事を探すとはどういうことか、紹介したいと思います!
スーパーのレジの仕事を得るのにディプロムが必要な国、フィンランド
これを知った時は心底驚きましたが、フィンランドでは基本的にスーパーでレジの仕事をするにもディプロムが必要です。
ディプロムとは、ammattikoulu(アンマッティコウル)と呼ばれる職業訓練校(≒高等専門学校)やyliopisto(ユリオピスト、大学)などの卒業資格のこと。例えば、スーパーの仕事に応募するなら、セールス全般の知識を学ぶ専門学校を卒業している必要があります。
そういえば、欧米では仕事の採用形態自体が能力と経験を重視するものであり、日本の新卒採用のようなポテンシャル採用は行われません。大学卒業時から即戦力を求められるため、欧米の学生は在学時から積極的にインターンシップなどで職業訓練を行なっています。
なるほどそう思えば、仕事に求められる知識とスキルを学校で学んできたディプロム持ちの人員しか採用しないと考えてみると、レジ係の話も確かにその方針通りであり、フィンランドもまた欧米の採用方式を踏襲していると言えます。
ただ、ですね。日本人の僕にはまったく理解できません。例えば、ビルの清掃の仕事をするのに清掃の職業訓練校の卒業資格が求められることに、意味があるとは考えにくいです。
何事にも絶対はないので、人が足りなかったり「経営者がいい人だったら」(妻談)、条件は緩和されることもあることもあるみたいですが、あんまり期待しないほうがいいでしょう。フィンランドも不況で、求職者があふれているからです。
もしかすると過剰な応募者の数を制限するために厳しい採用条件を設定しているのかもしれませんが、だからと言ってスーパーのレジ係の仕事にディプロムが求められる世界は人々が望んでいるものなんでしょうか?
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フィンランドにはバイトという仕事形態がない
そしてさらに、多くの人にとって大きな驚きだと思うんですが、フィンランドにはアルバイトという働き方がありません。日本のバイトのように、「全国どこでも広く募集されている比較的簡単な仕事」が、フィンランドにはないんです。
探せばあるにはあるのでしょうが、どこかにはあるんじゃないの?というレベル。日本のように誰でもすぐに見つけられるものじゃありません。
そのため、フィンランドでは、高校生がマクドナルドでちょっと働いて遊び代を稼ぐ、子育てが落ち着いたお母さんがちょっとパートに出て家計を助ける、というようなことができません。仕事といえば基本的に無職かフルタイムの正社員化の二択であり、雇用形態が非常に極端です。
なお、フィンランドの被雇用者の労働形態には、以下のようなものがあります。
- Koko-aikatyö・・・フルタイムの仕事
- Osa-aikatyö・・・パートタイムの仕事。時短勤務の正社員に近く、いわゆるバイトのイメージからは程遠い
- Kesätyö・・・直訳すると夏の仕事。夏季限定、高校生用の短期バイト
- Työharjoitteru、Työkokeilu・・・給料付きインターンシップ
このように5つほどありますが、日本のアルバイトに相当するものは一つもありません。最も近いのはkesätyöだと思いますが、応募対象は基本的に15〜18歳の高校生。
妻に例えば30歳や35歳くらいの人は応募できるの?と聞いたところ、若い人がほしいから応募はできるけど面接には呼ばれないかもとのこと。リアルです。あまりに対象年齢が限られている上に夏季限定のため、例外と考えるべきでしょう。
日本の過酷な労働環境は悪い意味でよく話題になりますが、フィンランドのこの事情を見ていると、働き方に自由があるという一点においては大変優れていると思います。
良いフルタイムの仕事を見つけるのも難しい
前の記事で書いたように、フィンランドではいったん仕事が見つかりさえすれば仕事環境は最高なんですが、その仕事を見つけるまでが難しいという現実があります。(北欧・フィンランドに移住するメリットとデメリットまとめ。メリット編【保存版】)
一言で言うと、フィンランドで仕事見つけるの、結構ムズイです。
フィンランドは人口540万人の小規模な国の上、首都ヘルシンキをはじめとしたトゥルクやタンペレなどの上位数都市に人口が集中しています。フィンランドの人口の多くを占める小規模な都市には仕事の数自体が少ないので、良い仕事を見つけるのはかなり難しいでしょう。
僕は人口8万人4000人のポリに住んでいますが、語学学校の先生ですら生徒たちにポリには仕事ないよと言うくらいです。いやね、8万人というとだいぶ少ないように思えますが、フィンランドでは人口7位の”ビッグシティー”なんですよ。
8万人台で国内7位の規模ということは、その他多数を占める他の街の人口は・・。。ってことです。そんな人口規模なら、そりゃ仕事なんてありませんよね。
フィンランドでいい仕事を得るには、良い教育を受けて都市部に住む必要があります。他国でも似たようなもんなんですが、人口が540万人と少ない分地方都市の規模は本当に小さいので、職探しはかなり難しくなるようです。バイトもないですしね。
参考: フィンランドの人口別都市ランキング上位(1〜100位)
(中略)
考察
僕は現在unemployed benefitと呼ばれる非雇用者手当を受給しており、そのことは今まで何度もブログに書いてきました。フィンランド政府にはとても感謝しています。
でも、裏を返すと、仕事をしていない住民に対してこれだけ手厚い手当を支給できるのは、きっとそれくらいやらないとまずいくらい失業者が多く、仕事を見つけるのが難しいということを意味しているのでしょう。
既存の非雇用者手当が凄すぎるんです。現在妻もこの手当を受給してるんですが、その額は約523ユーロ=64,000円(税引き前653ユーロ=80,000円)。ただし、家賃の半分弱が家賃補助として別に支払われます。
また、Unemployment Benefitと呼ばれる同非雇用者手当として、外国人である僕も毎月約770ユーロを受け取っています。妻より200ユーロ以上高い主な理由は、フィンランド語の語学学校の通学手当が上乗せされているから。
銀行の管理画面のスクリーンショットを載せておきます(写真下)。774.24ユーロが、フィンランド社会保険庁事務局のKelaから振り込まれた金額。 日本円にして95,000円を超えます。
そして、悪いことに、この手当は働き出すと停止します。非雇用者手当なので当たり前ではあるんですが、今まで何もせずもらえていたものがもらえなくと、人は損失と感じますよね。
この手当のおかげで仕事が見つからなくても生活していけるので、見つからなくてもいいや、嫌な仕事をがんばって探してまでやることないやと思うフィンランド人はとても多いです。
仮に仕事を見つけたとしても、希望に沿わない低賃金の仕事であれば、すでに受給している非雇用者手当の支給が停止するデメリットの方が大きいと判断し、すぐやめて続かないことは多いでしょう。というか、実際にそういうケースは多くありますし、この制度下ではそのように判断するのは合理的です。
一方、フィンランドが世界で初めて国家主導の社会実験を始めたベーシックインカム。こちらは全国民に同額の補助金を毎月等しく支給するという制度で、働いても減額されません。つまり、どんな仕事でもやればやるだけ手取りが増えていくので、働く価値が大いにあるという状況に置かれます。
フィンランドでいち早くベーシックインカムが議論され、世界で最も実験が進んでいるのも、良い仕事を見つけるのが容易でなく、失職中でも最高に手厚い非雇用者手当があるおかげで働かなくてもよくなったフィンランド人に、再び働く意欲を持ってもらおうとしている政策の一つだと僕は考えています。そういう意味でも、ベーシックインカムには賛成ですね。
ニューズウィークの記事によると、現在フィンランドで行われているBIの国家的社会実験の概要は以下の3つ。
- 期間は2017年1月1日〜2018年12月までの2年間
- 無作為に選出された2000人の失業者が対象
- 支給金額は月に560ユーロ(約6万8000円)
実際にフィンランドで生活している僕の感覚から言うと、560ユーロでは1人暮らしだと厳しいでしょうが、2人以上ならそこそこの都市でも完全に働かず生きていくことが可能な額にあたります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。社会福祉大国のフィンランドで、仕事がなかなか見つからないとか、ましてやバイトがないという状況を想像していた人は少ないのでは。まぁ、そういった点も含めてのフィンランド。完全に何もかもが素晴らしいユートピアはないってことです(๑•̀ㅂ•́)و✧
いいところも悪いところも知った上で、それでもフィンランドが好きと、そんなふうに言ってもらえたら嬉しいなと思います。(なんか恋人みたいなこと言ってる笑)
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※2017年6月24日追記
読者の方より貴重なコメントをいただきましたので紹介します!
はじめまして。 Määräaikainen + osa-aika työで働いている在住7年の者です。記事拝見しました。以下、感じたことを綴ります。
確かにこの国に気軽なバイトはありませんが、それは労働が安売りされていないメリットの裏返しでもあると感じています。 レジ仕事でもディプロマが必要、というのは今までフィンランドが教育を売り物にしてきた印、あるいは証でもあります。また、教育産業と社会保障との共存共栄がうまくいってきた結果でしょう。
職業学校をはじめ教育全般への予算が大幅に削減されている昨今、フィンランド自らの首を絞める行為に拍車がかかっていて、これから一体何を売りにするつもりなのか疑問を持って過ごしています。
ちなみに失業手当työttömyyspäivärahaですが、ご存知とは思いますが日本より緩くて、支給期間中でも単発の仕事は出来たはずです。働いた日の分の手当は削られますけれどね。
ようやく夏らしい日が続くようになりました。ポリは良いところですよね。ご夫婦ともども良い夏休みをお過ごしください。
追伸:人口密度の表は少し古いモノのように思います。ここ最近の合併が加味されていないような。
ありがとうございました!
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